緻密なまでの完璧主義からくる作品の素晴らしさ。紙・布・ガラス・木の質感をメゾチントという銅版画の技法で完璧に表現できる作家は佐藤暢男以外に誰もいない。氏はよく長谷川潔や浜口陽三の作品を研究したと言うがマネではない。彼独自の作風がある。氏の作品のモチーフは写実的で、具象的ではあるが、彼なりのメルヘンやエロチシズムを感じる。カラーメゾチントにおいては作品の多くが色の三原色の三版で刷られており、その出来の完成度は人間業とは思えない。まして下絵なしで直接銅版に彫られているとの事を知り驚きに耐えない。作品には、モノクロの作品には、「いちま」、「5つのコップ」などの緻密な秀作が多い。1970年中頃より「多治見修道院」を初め多くのカラーメゾチントの作品を発表している。
また少年航空兵だった氏は特攻で亡くなった多くの戦友の魂の慰安をこめた作品を発表している。「聖観音のお顔」「靖国神社 みたままつり」「シリーズ戦友たちの富士・赤富士」「シリーズ戦友たちの富士・朝霧富士」などがある。
総作品数322作品を制作されて居られます。当保存館では、189作品、259点を収蔵している。
是非、多くの方に佐藤暢男の作品を観賞して頂きたい。